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実績 PERFORMANCE

CASE 18

更なる成長を遂げるためのホールディングス経営への移行、地域に根差したまちづくり会社の挑戦

広島県広島市に本社を置き、解体工事業から、地域に根差したまちづくり事業として事業領域を拡大してきた桑原組は、事業承継が社会課題化する状況を背景に、更なる成長を目指し、テラスホールディングスへと進化。これまでの事業成長の経緯や、ホールディングス化を行った目的や今後の展望について伺った。

  • 企業概要

    テラスホールディングス株式会社

    広島県広島市 / 代表取締役 桑原 明夫

    業種 市街地再開発コンサルティング、プロパティマネジメント、建築アセットマネジメントに関する業務/経営コンサルティング業務
    ホールディングス化の目的 事業成長

テラスホールディングス 桑原様にお伺いします。
現在、貴社が取り組まれている事業について教えて頂けますか。

桑原

 テラスホールディングスは、株式会社桑原組が事業成長を目的として、ホールディングス経営に移行するために新設した会社です。桑原組は、1958年に設立され、解体工事をスーパーゼネコンから受託する一次下請の会社でした。

桑原

 私はちょうど50周年にあたる2009年に、4代目として就任しました。私が社長を継いだのは、ちょうどリーマンショックが起こった翌年でした。本来、我々の業態は翌年に繰り越す受注が存在するのですが、全くない状態での承継でした。
 本当は引き受けるべきかどうか迷いました。妻からも「社長を引き受けるなら別れたい。」とまで言われました。私は当時1998年に自分で創業した会社の社長をしており、ちょうど10年目で大変だったけど、楽しくなってきた時期でもあり、掛け持ちできるだろうかと思いました。
 ただ、私の父も桑原組の創業メンバーの一人だったこともあり、50年続いた会社に対して、自分ができることは何かを考えたとき、継続させることしかないと思い、引き受けることを決意しました。ただ、経営理念・基本方針・行動指針・人事方針といった会社の骨格たるものは何もなかったので、4代目ですが第二創業のような形で、ゼロからつくることに取り掛かりました。

桑原

 まず、リーマンショックの反省を踏まえ、下請から脱却し、受注構造を変える必要があると強く感じました。当時の案件として、旧広島市民球場の解体工事を行政より直接契約を取ると決意しました。そうなると、規模が大きい元請工事を請けるためには「一般建設業許可」ではなく、「特定建設業許可」が必要となります。特定建設業許可を受けるためには、会社として財務面を強化し、技術者を増やすことが求められたので、技術者については、社員を養成する方向で進め、新しい事業戦略を策定しました。

桑原

 解体工事には、ダイオキシン・アスベスト・土壌汚染等、環境リスク対策を行う必要があります。環境リスク対策は、これまで自分達で請けたことはあっても、外注が中心でした。顧客の視点としても、環境リスク対策も含めて、ワンストップで相談できるところはありませんでしたので、内製化して一気通貫できるようにすることで、点と点を線にし、事業領域を拡大していきました。

 ただ、事業領域を広げるにしても、そこにはストーリー性が必要です。解体工事の付帯事業としての環境リスク対策事業を内製化する流れから、更にどう領域を拡大するかを考えるため、「環境ビジネス研究会」という全国視察型の勉強会に参加をしていました。
 そこで出会ったのが「無印良品」で有名な良品計画でした。桑原組にとって「壊す(解体)」ではない選択肢として「リノベーション」は興味があったので、良品計画へ自分達もやらせて欲しいと手を挙げました。そこで良品計画から「無印の家づくりをしっかり学んで欲しい。“永く使える、変えられる”という無印のコンセプトが無印の家に込められている」と言われたので、「無印良品の家」のフランチャイズ事業を開始しました。

 改めて自分達の事業領域について、「解体」を「再生」と捉え直し、「再生」「創造」「暮らす」「集う」という、我々の地域に根差したまちづくり推進企業という想いを表現しながら、事業領域を増やすことにしました。点から線へ、線から面にし、それを循環させる形にすると、どこからでも、「地域に根差したまちづくり」というキーワードに収れんしていきます。

今回、ホールディングス化を目指した理由や
目的について教えて頂けますでしょうか。

桑原

 私が社長に就任した当初からこういったコンセプトは検討していましたが、ホールディングス化することで、ようやくスタートラインに立てた気持ちです。

 コンセプトは定まったものの、桑原組単体で事業領域を広げると、やはり解体工事が中心というイメージが拭えません。組織としての立ち位置を変える必要があると思い、コンセプトを実現するためには、いずれホールディングス化が必要だと感じていました。
 実際にホールディングス化を実行したきっかけは、ここ数年、事業承継の相談をよく受けるようになったという背景があります。会社を具体的に引き継ぐことを考えたときに、桑原組のままで引き受けると、どうしても桑原組が吸収する、相手方の屋号がなくなる、といったイメージにも繋がります。そうではなく、桑原組と相手方が兄弟のようにアライアンスを組みながら共に成長するにはどうしたらよいかを考えるようになりました。

 桑原組は中核企業として、「再生」に関連する事業を中心に技術力と生産性を高めていきます。今後は、「創造」「集う」「暮らす」それぞれのカテゴリーに対応した法人をつくりつつ、グループを形成し、事業承継に課題を有する会社を引き受けることで、更なる成長を目指します。

 ホールディングス化において気を付けた点は、これまで継続してきた桑原組に対しての敬意を忘れないことです。自分自身の考えとして、古いものを大切にしたいという気持ちがあります。“テラスホールディングス”の由来も、コトを「照らす」という意味だけではなく、アマテラスオオミカミにあやかってつけたこともあり、古くからのものに感謝の気持ちを表現したいという意味を込めました。

資本政策のアドバイザーとして、
クレジオ・パートナーズを利用した感想を教えてください。

桑原

 クレジオ・パートナーズ以外にも他のコンサルティング会社に相談したこともありましたが、細かい点を質問すると、専門家については本部から人を連れてこないといけない等のスムーズな対応をしていただけないこともあり、提案された内容にどこか納得感がありませんでした。
 クレジオ・パートナーズについては、そういった専門性のところは何も不安はありませんでした。代表である李さんのこれまでの実績も知っていましたし、当社の財務顧問からも「きっと力になってくれる」とお勧めがあったこともあり、ご縁を感じました。
 企業は日々、成長・進化していきます。クレジオにも、支援した会社が、どう成長していくのかをきっちりと把握することで、ビジネスチャンスを広げながら、お互い並走するパートナー関係であって欲しいなと思います。クレジオなら絶対できると思っています。

ホールディングス化を終えて、今後の目標や方向性を教えてください。

桑原

 今後は、IPOへ舵を切ることも視野に入れています。できるかどうかではなく、まず挑戦するという企業文化なので、社内にもその旨のアナウンスをしていますが、キョトンとしている社員もいれば、目を輝かせた社員もいました。
 桑原組の社長として、これまで差別化が図れる強い会社を目指す取組の中で、ブランディングが重要であり、そのための広報戦略が非常に大事だと感じています。私自身も宣伝マンとして、世の中のファンづくりを心掛けてきました。更なるブランディングを展開するには、桑原組の中だけでやるには限界を感じるようになりました。桑原組としてのビジョンは受け継ぎつつ、ホールディングスを通じて、もっと事業領域を広げ、自由な発想で、自由なことに挑戦したいと考えています。

桑原

 私自身は、桑原組の引継ぎを終えた時、ホールディングスに専念しながら自由なことをしたいと思っています。引退した経営者の方と、片や80歳を過ぎても現役を続ける経営者を比べると、やはり現役の方の方がオーラを持っていらっしゃると感じました。私自身もどこかのタイミングで退く必要があることは理解しつつも、生涯現役として緊張感を持ち続けたいという意味で、引退時期は決めていません。

最後に地域で資本を活用して
事業成長を目指す経営者に向けてメッセージをお願い致します。

桑原

 よく経営者の後継ぎとして入社した息子に会って欲しいという相談を受けます。その時に、父親ができなかったことをあなたがやるなら、リスペクトは必要だけど、ある意味、父親と線を引かないといけない、結局は自分の覚悟だよ、と伝えています。
 また、テクニック的な部分より、経営理念や方針を自分で示し、社内に啓蒙していくことが重要で、これができれば何でもできるとメッセージを送っています。これを、次世代の経営者が覚悟して受け入れ、組織の中で意識を醸成できるかが重要だと、私は思っています。
 その上で、事業承継が課題になっている今の時代に、ホールディングス経営は、連合軍を作るように、横に広げることができるメリットがあるのではと考えています。
 ただ、ホールディングス化は終着点ではないので、そこからステップアップして、事業領域を拡大し、新しい働き方の考えも取り入れつつ、幅広い人材を活かしていくことが求められると思います。