fbpx

実績 PERFORMANCE

CASE 09

建設業における高い技術力とM&Aの活用、
『違い』を学ぶことでシナジーが生まれる

創業以来、高い技術力により、建設業において「地盤改良事業」「斜面防災事業」「管路メンテナンス事業」を主軸に事業展開してきた東亜グラウト工業。近年はM&Aを積極的に活用し、事業成長を続けている。未来の地域創生を担う企業として、M&Aを活用する戦略や今後の方向性について、東亜グラウト工業 代表取締役常務執行役員 大岡太郎氏に伺った。

  • 譲渡企業

    X社

    関東地方

    業種 建設業
    M&Aの目的 後継者不在
  • 譲受企業

    東亜グラウト工業株式会社

    東京都新宿区 / 代表取締役常務執行役員 大岡太郎

    業種 建設業
    M&Aの目的 事業拡大

事業概要を教えて頂けますか。

大岡

 当社は、「社会資本整備を通じて、人命・財産・環境を守り、社会貢献を目指す」を基本理念に掲げ、「地盤改良事業」「斜面防災事業」「管路メンテナンス事業」の3つの主要事業を展開しています。元々、父が井戸掘りから事業を始めた経緯もあって、地下に関する事業を基礎として、地盤改良事業に取り組みました。その後、斜面の防災工事を展開して、3つ目に下水の老朽化した管を直していく事業を始めました。
 当社の特徴の1つは技術力の高さです。単に工事を請けるだけではなく、海外から特殊な技術を取り入れ、日本に向けて規格化して展開しています。インフラ技術は海外が圧倒的に進んでいます。当社は、斜面であればスイス、管であればドイツといったように、海外から技術を仕入れており、工事の前段階の技術の製造・開発も行う会社です。
 技術発掘の際は、競合他社と異なるような技術にこだわっています。これまでと同じような技術を持ってくると、改良の重ね合いになってしまうので、全く新しい技術を導入して、建設業の中で、新たな業界をつくるという動きを展開しています。
 最近は「働き方改革」にも積極的に取り組むようになりました。毎年、社内から選抜メンバーを集め、課題を出し合い、実行可能なものは役員会で決裁して実行していく取組を行っています。現在も試行錯誤を続けていますが、働き方改革に取り組む前は、会社として整備されていないところがたくさんありました。給与体系等、制度面は役員を中心に最低限行い、東亜グラウト工業のオリジナリティを出す部分は社員の自主性に任せる方向で動いています。4~5年間、取り組んだ結果、社員が前向きに業務に取り組むようになりました。一人一人が会社の目標を気にするようになり、自分達が考えて動くという意識が芽生えたところはプラスだったと感じています。
 当社が将来目指している姿は、地域創生・地域再生を推進する「まちのお医者さん」です。我々の建設業は人が住んでいる地域でないと成り立ちません。人口減少を迎える日本において、どうしたら我々が仕事を続けられるかを考えた時に、街が活気づく必要があると気づきました。将来的には、官と連携したインフラツーリズムやスマートシティ等、街を活性化していくような企業を目指しています。

M&Aを活用する目的や戦略について教えて頂けますか。

大岡

 M&Aを活用する目的は2つあります。1つは人口減少が進む中で、地域内の建設事業者が地域外の事業者に声をかける機会は減少すると考えられるため、M&Aを通じて地域に本店を置き、その地域に根強い企業と関係を作っていきたいと考えています。我々のグループに加わることで、繁忙期に合わせて人材を流動化することも可能だと考えているので、グループ全体の働き方改革にも繋げて、社員の負担を平準化していきたいです。 もう1つは、当社の3つの主軸事業に加えて、新たな柱となる事業を立ち上げる必要があると考えており、M&Aはその手段だと位置づけています。
 M&Aの対象は「地域に根付いていること」「特殊性があること」を重要視しています。特殊性については、技術力の高さだったり、地域における関係性だったり、取引先の広さだったり、どんな内容でも構いません。単純に営業利益が出て、儲かっているという企業ではなく、何かしらの武器となる特殊性がある企業を評価しています。
 当社はM&Aを検討する度に、交渉段階から相手先企業の課題を突き止めて、どのように課題を解決し、一緒に成長できるかを資料に落とし込んで、相手方にも説明しています。M&Aと言っても、内容はあくまで当社と対象会社の対等な業務提携です。長期的な信頼関係構築のため、新体制スタート時には、当社の経営ビジョンや業務提携の狙い・目的を従業員に対しても丁寧に説明するようにしています。
 当社は、「採用力」と「人材育成の仕組み」に自信があります。各種広報を通じて採用力を強化し、働き方改革を通じて、中堅社員に新入社員をつけて育成する仕組みにしています。社員教育の視点で一般的に聞くと「当たり前」と思われるかもしれませんが、建設業で実際にこの取組をできている企業は多くありません。工事の種類ごとにローテーションを組み、敢えて最初は一番難しい技術を学ばせるようにします。こういった仕組みを試していく中で、事故も起こらず、新しい仕組みを理由に辞めた社員もいないという成果を挙げることができました。このように人材育成を強化しているので、人材の採用・育成に困る企業がいらっしゃれば、当社グループに加わることで、力になることができます。

M&A後の関わり方について教えてください。

大岡

 当社は基本的には代表となる後継者を当社から送る方針を掲げています。しっかりとシナジーを発揮するためには、当社から人材を提供することが必要です。代表だけでなく、現場の人材についても1~2名を送ります。そうすることで、相手先からも喜ばれますし、今後の事業を拡大するために協力していく関係を作ることができます。

M&A仲介会社の中から、クレジオ・パートナーズを利用してみた感想を教えてください。

大岡

 正直な話、最初は非常に消極的でした。紹介者から「1度だけ会って欲しい」と言われましたが、当時は別の案件も進行中であり、これ以上の案件を受けられるか分からないというタイミングでもありました。お電話を初めて受けた時、ちょうど空港に降りて、疲れていたタイミングだったことも覚えています。
 1度会うだけとのつもりで、面談を行いましたが、ご紹介頂いた案件が魅力的だったこともありますが、それに加えて、担当してくれた土井さんの熱量がすごかったですね。すごく親身になってくれたし、柔軟に対応して頂いたので、そこがなければM&Aを進めようとは思ってなかったかもしれません。当社も他のM&A会社とお付き合いはありますが、やはり自分の成績と連動しているためか、急かしたり、M&Aの進め方や条件面で妥協してくれないというケースも過去ありました。
 クレジオは、当社からのリクエストにも迅速に対応して頂き、結果がダメであっても、すぐにご対応頂けました。そうなると「私も頑張らなきゃな」と思うようになりました。ふり返ってみると、すごくいい出会いのきっかけを頂いたなと感じています。
 我々のようにM&Aを活用する企業と、M&A仲介会社の信頼関係は非常に重要です。クレジオが他の会社と違うなと感じたのは、売手企業と買手企業の担当者を分けないのでやりやすかったと感じました。他の会社では、担当を分ける場合もありますが、その場合、担当者間で齟齬があり、相手に迷惑をかけるというケースもありました。担当が変わると反応が鈍くなり、売手経営者のニュアンスを伝えるのも鈍くなってしまって、私自身「私は一体、何の話をしているのだろうか」という気分になることもありました。その点、クレジオは担当者が一緒なので、意思疎通に齟齬がなく、スピード感をもってご対応頂けました。
 今後、クレジオに期待することとして、今後もよい案件を発掘して、困っている経営者の力になって欲しいと思います。1つの取引が終わると、コミュニケーションが少なくなる仲介会社もありますが、クレジオはアフターフォローも積極的にコミュニケーションしてくれるので、顧客目線の変わらないスタイルでいて欲しいなと思います。

最後に、今後M&Aを考えている方へメッセージをいただけますか。

大岡

 M&Aで会社を譲渡しようと考えられている方について、私自身が父からの事業承継の際に悩んだこともあり、会社を譲渡する側の気持ちは理解できるつもりです。事業承継に悩む方は、「M&Aは単純に会社を売ることではない」と理解した方が、M&A後も、気持ちよく過ごせるのかなと考えています。最近は、M&Aの意味も広がり、株式の保有割合によって、どのように会社に関わるのかを選択できるので、そのまま社長として残るケースもあります。「売却して会社がなくなる」というネガティブな意識は捨てて、M&Aを「次のステップのための手段」であると捉え、様々な選択肢があるということを知ることが大事だと感じています。
 会社の売却を検討する際は、その会社の強みを活かした特殊性も必要です。私は経営のスタンスとして、事業の成長にビジョン・パッションはそんなにいらないというスタンスです。むしろ、しつこさがあって、やりきる経営者は強い。そういった経営者の本質のところが事業の色んな形で現れて、魅力的な会社かどうかが決まるのではと考えています。
 今後、M&Aで成長しようという企業については、目的をしっかり持つことが大事だとお伝えしたいです。売上だけを増やすという目的であればM&Aはしない方がいい。M&Aの経験上、組織を統合していく中で、それぞれの組織のちょっとした違いが面白いと感じています。お互いの違いが課題を解決する場合もあり、そこから様々なシナジーが生まれる可能性を秘めています。単にM&Aをするのではなく、自分自身も学ぶ機会と捉えて、目的を意識することが重要です。