fbpx

実績 PERFORMANCE

CASE 13

経営者と従業員にとっての事業承継、
「信頼」が築く、電気工事業におけるM&A

福岡県に本社を置き、計装・電気・通信の工事事業を展開するデノバス。事業拡大のため、配電盤・電力制御装置・電気工事において、確かな技術と経験を有する一方、後継者不在の課題を持つ企業を事業譲受。M&Aを経てどのような変化があったかを、経営者と承継を経験した従業員の目線から伺った。

  • 譲渡企業

    X社

    福岡県

    業種 電気工事業
    M&Aの目的 後継者不在
  • 譲受企業

    株式会社デノバス

    福岡県福岡市 / 代表取締役 梶山 直幹

    業種 電気工事業
    M&Aの目的 事業拡大

はじめに、事業を譲受された梶山様にお伺いします。貴社の事業概要とM&Aを活用しようと思ったきっかけについて教えて頂けますでしょうか。

梶山

 2016年に計装工事から事業を立ち上げました。その後、電気工事が増え、工事専門で事業を展開していました。電気工事には、制御盤がつきものだったため、制御盤の設計を手掛けるようになり、現在の計装・電気・通信の工事を展開する会社になりました。

梶山

 以前も2020年5月に、事業拡大のため、長崎県佐世保市の電気通信工事会社をグループに迎えました。今回の事業譲受は、制御盤事業の強化が目的でした。元々、制御盤の事業は外注がメインで、内製化したいという考えがありました。ただ、内製化するには、人材も設備も必要となる。内製化するための投資ができるほどではなかったため、この経営課題をM&Aで解決できないかと考えていました。

譲受した企業の概要について教えてください。

梶山

 制御盤の製造を手掛ける会社で、社長が一人で電気工事も請けている会社でした。会社の規模が4名と小規模ではありましたが、この規模で社長が工事までやっている会社は珍しい印象でした。
 水処理が得意な会社と聞いていたのですが、実は、たまたま前の年に、水処理の制御盤と工事を受注していました。慣れない業界で、当時は二度と水処理関係の工事はやりたくないと思っていました。ただ、今回の事業承継のお話を聞いた時に、不得意な部分を補えるのではないかと前向きに捉えました。

続いて、譲受企業の従業員という立場でM&Aを経験された佐藤様に、事業承継の経緯をお伺いします。

佐藤

 事業承継については、M&Aの話を聞く前から、前社長から相談を受けていました。年齢的なところも含めて、「そろそろどうしようか、悩んでいる。」と言われていました。

眞﨑

 私がご相談を受けていた時も、早いタイミングで前社長から、「制御盤の事業は工事や職人の技の部分が大きいので、信頼できる社員に事前に伝えておきたい」と言われていたのを覚えています。

梶山

 珍しいですよね。前社長と大きな信頼関係があったからだと思います。社員に伝える勇気も相当だったのかなと想像します。

佐藤

 事業承継については、前社長が方向性を決めたのであれば、もう一緒に行くしかないなと考えました。会社を辞めて、自分で独立するという考えは全くなかったですね。前社長は、仕事に対しても、とにかくやる人でした。その社長が決めたのであれば、我々もついていくしかない。違う道はありえない。

佐藤

 前社長とは10数年前に出会いました。その前は、私は制御盤の事業に携わっていました。入社当時は営業力がなかったので、仕事量が少なく、自分で仕事を取って、自分で終わらせるという仕事の進め方でした。前社長は、制御盤にしても、電気工事にしても自信がある方で、聞いたら何でも答えてくれました。最後までやりきると、自分達に自信がつくようになり、社長に聞かなくてもできるようになっていました。

従業員という立場で、事業承継「前」と「後」の大きな違いは何でしたか。

佐藤

 一番大きな違いは、書類関係ですね。まだ、しっかりと慣れていないところもあります。本来であれば、デノバスの会社のやり方が正しいと思います。ただ、今までのやり方で接してきたお客様に新しいやり方をお伝えするのは苦労する点ですね。

梶山

 当社も以前は、あまりルールを作っていませんでしたが、ルールなくズルズルとやっていると、無駄な経費が発生し、賞与にも影響が出ることになります。少し息苦しいところもあるかもしれませんが、管理のための管理は極力避けるようにしています。 当社は「信頼」を大切にし、お客様を大事にしています。お客様からご信頼頂くためにも、しっかりするところはしっかりしたいという方針です。

佐藤

 仕事を通じて、古い時代から新しい時代を経験できるのはよかった点です。前の会社では、若者を育成しないといけないという課題感を持っていましたが、規模が小さかったので、なかなか難しかったのも現実です。デノバスには若手社員も在籍しています。先日、ベトナム人の方が入社しましたが、技術を学ぶスピードの速さに驚きました。
 現在の目標は、こういった若い方の育成をしたいと思っています。

改めて、梶山様にお伺いします。貴社が今後目指す目標について教えてください。

梶山

 M&Aを通じて、制御盤を製造でき、ソフトも内製化できるようになり、現在の20人規模で一通りのことはできるようになりました。この規模で、これだけできるところはないと思っています。
 現在は、コロナもあり、試練の時です。特に制御盤関連の事業は、受注はあっても部品が入手できないという課題を抱えています。ただ、当社は電気工事の事業もあるので、それぞれを補うことができます。これが多角化のメリットだと感じています。事業を立ち上げた時から、今の姿を目指していた訳ではありません。その時々で、ベストと思う選択をしてきたつもりです。
 今後、当面はM&Aは積極的に行わず、現在の体制を維持しながら、各事業が成り立つ状況を目指します。現在見えている目標は30名規模ですね。50人を超えるとまた違うステップになると感じています。

仲介会社としてクレジオ・パートナーズを利用してみた感想を教えてください。

梶山

 初めにクレジオ・パートナーズから話を聞いた時は、話の内容に信憑性があるなと感じました。M&Aの案内はたくさん来ますが、担当して頂いた眞﨑さんが九州でも活動していると聞いて、首都圏にいて電話だけで話す会社とは違うなと思いました。
 M&Aのコンサルタントに求めるのは、情報の伝達です。別のM&Aでは、聞いていた情報と異なる点があり、一つ一つ確認が必要でした。眞﨑さんの場合、上手く伝えて頂き、実際に面談をする前からどういう会社かイメージできる程でした。 M&Aを進める中で、デューデリジェンスの大切さは痛感しました。今回のM&Aでもデューデリジェンスを経て、財務面の課題を発見することもできました。

最後に、お二人にお伺いします。今後事業承継やM&Aを考えている企業に向けてメッセージをお願い致します。

梶山

 事業承継に悩んでいる方は、とにかく相談した方がいいとお伝えしたいです。話しを聞くだけであれば無料なので、M&Aを選択肢の一つとすることが大事だと思います。ただ、相談先は選ぶ必要があると思います。
 M&Aを活用したい経営者の方には、デューデリジェンスは必要だということを伝えたいですね。M&Aは簡単ではないというのも痛感します。従業員との関係性も重要です。事業を譲受した後、きちんと膝をつき合わせて話をすることで、自分の会社を理解してくれれば、大きな戦力となります。親会社が子会社を下請けにするのではなく、業種が異なるグループを作ることで、それぞれが成長できる関係を築くことが理想だと思います。

佐藤

 なかなかメッセージとしてお伝えするのは難しいですね。きっと事業承継を全く相談されていない状況で、「M&Aしたから他の会社に行け」と突然言われたとしても、仕方ないなと自分は考えたと思います。前の会社で、一時期社長が入院で不在の時もありました。その時も、社員全員で頑張るしかないなと決意していました。

梶山

 M&Aの時でも、新しい環境に飛び込んでみればいいと思います。従業員の場合、辞めることも可能ですが、異なる環境にチャンスもあると思います。