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実績 PERFORMANCE

代表を務めた小松英介氏と、譲受け企業である株式会社ティーエス・ハマモトの代表取締役である濱本利寿氏に、M&Aを決意するに至ったこれまでの経緯と今後の展望について伺った。
CASE 03

事業承継は挑戦を続けるチャンス

建設業においても中小企業経営者の高齢化が進む中、後継者不足が社会問題化。建材の製造施工を手掛ける川口建工は“事業承継の悩みを解決したい”という思いから、M&Aによる株式譲渡へ。一方、事業拡大を目指す福永建設工業は、M&Aを積極的に活用し、地域の建設業を支える企業を目指す。売り手側、買い手側それぞれのM&Aに至る経緯と今後について伺った。

  • 譲渡企業

    株式会社 川口建工

    広島県福山市 / 会長 川口泰洋

    業種 金属製建具の製造・販売・工事業
    M&Aの目的 後継者不在による事業承継
  • 譲受企業

    株式会社 福永建設工業

    広島県広島市 / 代表取締役 福永大作

    業種 建設業
    M&Aの目的 事業領域拡大

より良い未来のために決断

まずは譲渡側の川口様にお伺いします。M&Aによる事業承継を考えたきっかけ、経緯を教えていただけますか?

川口

 創業者である私自身が70歳に近づき、事業承継を考えるようになりました。子どもが5人いまして、長男は東京、次男や三男たちもそれぞれ別の仕事しております。長男に戻ってくるか?と相談をもちかけたのですが、「ビジネスモデルはどうか?」など難しいことを聞いてくる始末。いずれにしても子どもたちが広島に戻って事業を引き継ぐのは難しいと判断しました。それから従業員への事業承継も検討したのですが、借金をしてまで株式を取得する従業員はおらず、諦めました。
 当時新聞等の報道で、様々な異業種がM&Aを活用していることや、オーナーの年齢が高齢化して事業承継が難しく、日本の中小企業がなくなるのではないかといった話題を見聞きしていました。そんな中小企業の問題に対して、国を挙げて事業承継を推奨する流れもあり、M&Aを検討することを決めました。

M&A仲介会社の中から、なぜクレジオ・パートナーズを選んだのでしょうか。

川口

 M&Aを意識し始めたのは、2017年頃。M&Aをするなら財務体質をよくしないといけないと考え、さらにさまざまな仲介会社から資料を集めたりして情報は得ていました。誰に相談したらよいかと思案していたところ、メインバンクである金融機関の事業承継セミナーに参加。そこでクレジオ・パートナーズの紹介を受け、メインバンクとクレジオ・パートナーズに共同で仲介を依頼することにしました。信頼しているメインバンクからの紹介だったので安心はしていましたが、担当者にお会いした最初は「若い」という印象で、大丈夫かなという一抹の不安もありました。しかし、クレジオ・パートナーズはよく勉強していて、資料もその都度作成してくれるし、分からないことがあれば持ち帰ってすぐに対応してくれるので、少しずつ信頼が増してきました。
 譲渡先の候補について、具体的に提案されたあたりから印象がぐっと変わりましたね。これまでの経験を踏まえ、それぞれの候補先についてポイントを説明してもらい、伝えるべきところをきちんと話してくれたのが印象的でした。

M&Aの過程で不安に思われたこと、大変だったことはありますか。

川口

 不安に思うところは特になかったです。M&Aをすると決めてから、とやかく言っても仕方ない、前を向いていこうと決めていました。大きなトラブルもなく、譲渡先を決定してからはとてもスムーズでスピード感があったと思います。

譲渡先の決め手は何でしたか。

川口

 オーナーが40代と若く、将来的には100億円企業を目指し、グループ化して進めていくという夢を持ち、「志が高い」と感じたことでした。事業を譲渡した後、自分がいつまでも居座るつもりはないと決めていたので、1~2年のうちに事業承継したいという思いがありました。オーナーが事業承継にあたり、「人を送り込む」と言っていただいたことで、スムーズに気持ちの整理ができました。

今回のM&Aを終えての感想、そして今後の目標や取組みたいことなど教えていただけますか。

川口

 派遣してもらった役員の方には日々、商品知識やプロセスを勉強していただいています。自分としても、福永建設工業グループの一員として、また、その一子会社として、力になりたいですし、目標の100億円に近づけるように尽力したいと思っています。
 生涯現役でいたかったか?と問われると、そうは思わないですね。ボランティアもどんどんやりたいし、元気なうちにもっと他にやりたいこともあります。現役引退して、することがない、という話も聞きますがそれは侘しく思います。今のうちから新たな趣味を持ち、充実した人生を送りたいと思っています。

強みを活かして建築分野の強化、拡大へ

続いて譲受側である福永様にお伺いします。M&Aの活用を考えたきっかけや経緯を教えていただけますか。

福永

 M&Aを活用する理由は事業規模を大きくしていくこと、建設業界で生き残っていくためというのが主な理由です。建設業界は重層構造であり、下請けが多いのですが、元請けや下請けまで受注できる体制をつくり、グループ全体でコスト管理を一貫してできるようにしていきたいと考えています。

なぜM&Aの仲介会社としてクレジオ・パートナーズを選んだのでしょうか。

福永

 以前別件で信頼している弁護士さんからの紹介でお仕事をご一緒させていただく機会がありました。その件は断念したのですが、クレジオ・パートナーズに最大限努力していただき、その時の印象が良かったので今回の件でもお世話になることにしました。
 クレジオ・パートナーズと大手の仲介会社との違いは「人」だと思います。大手の仲介会社からも日々ダイレクトメールをいただくことはありますが、その会社の社長さんとは会ったこともないです。クレジオ・パートナーズの場合、代表の李さんとは何度もお会いして気軽に相談することができました。やはり顔を見られる関係というのが良いですね。地元・広島に地盤があり、情報も豊富なところが信頼をおける点だと思います。

買収の検討で気にしていた点や決め手は何でしょうか。

福永

 まず、クレジオ・パートナーズは財務内容等の悪い話は持ってきません。これは絶対の信頼関係から言えることです。
 川口建工さんは地場の建設業界では有名な建材会社です。人脈もあり、設計から製造、施工まで一貫して対応し、しっかりとしたノウハウがあります。業歴、従業員の年齢バランスや勤務年数の長さなども考慮しました。
 当社の基本的なM&Aの考え方として「人」を送り込むということ。今回の件でも、送り込む後任の役員候補として新たに人材を採用しました。もちろん、事前に川口様、さらに役員の方たちにもご説明し、お伝えもしました。
 また、オーナーから1~2年ほどで退きたいと伺っていましたが、元々当社はベテラン人材を積極的に活用しているため、元気なうちはなるべく会社経営に協力いただきたい旨を伝えました。じっくりと事業経営も承継してもらいたいという意も込めてです。

今後の目標や方向性を教えていただけますか。

福永

 まだスタートしたばかりで目に見える数字的な部分では動きはないですが、売り手側の会社の強みを活かして、販路の拡大などを図っていきたいと思っています。
 建築業界が「きつい・汚い・危険」という「3K職場」のイメージが強いこともあり、若い人材が不足し、さらに高齢化が進んでいます。建設現場での事故・災害の防止など電子機器や通信技術を使ったICT化が今後の建設業界の課題だと思っています。これらを活用して業務管理を行っている建設会社等のM&Aも視野に入れていきたいとも考えています。

今回のM&Aを終え、クレジオ・パートナーズへメッセージをいただけますか。

福永

 仲介・FAという立場で、売り手側、買い手側のいずれかにつく場合や、両方につく場合等、色々な場合があると思いますが、「正直に商売して欲しい」と思います。正義、仁義、道徳を忘れずに、顧客となる会社のためを思って動いて欲しいと思います。

最後に、会社の譲渡や事業の売却を考えている方へメッセージをお願いします。

川口

 会社の譲渡を考えたのなら、躊躇することなく、まずはメインバンクやクレジオ・パートナーズ等仲介会社に、早く相談することが大事だと思います。信頼のおける仲介会社と巡り合うことが必須ですね。M&Aをする過程で全てが上手くいくとは限らないですが、一歩ずつ着実に地に足をつけて解決していけばいいのではないでしょうか。M&Aは、売り手側の方が弱い部分があるのかもしれませんが、それは当然のこと、相手があってこそ成立するものです。オーナーが70代、80代になっても現役で頑張っている会社があり、後継者がいない場合の事業承継は大きな課題です。責任が伴うのが社長という立場なので、安易に従業員へ株式を譲渡するのはリスクが伴うこともあります。下手したら悪者扱いされる場合もあるでしょう。
 私は買い取ってもらうのは当たり前と考え、M&Aで会社を譲渡しました。この度の新型コロナの影響で経済へのダメージも多く、財務内容が悪いところも出てくるのではないでしょうか。一人で悩まず、M&Aも一つの選択肢として仲介会社へ相談してみるのもありだと思います。M&Aは時代の流れだと感じています。

福永

 本来は私自身、会社の売り買いはピンときていませんでした。ただ、将来の柱となるような新しい事業が欲しい、事業を拡大したいと考えた時、社内での人材育成も含め、一から事業を立ち上げると20年ほどかかってしまいます。それは中小企業にとっては死活問題です。M&Aで“時間を買う”ということ。
 何のためにM&Aをするのか、目的や目標が明確であることが重要です。利潤の追求だとは思いますが、結局は「人」です。企業経営や事業運営の中核を担うのは「人」ですから。