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実績 PERFORMANCE

CASE 17

信頼関係をカタチに、成長を実現するための
エクイティ活用、キャンピングカーグループが目指す新しい未来

三重県に本社を置き、キャンピングカー事業を展開するダイレクトカーズは、同じくキャンピングカー事業で全国トップクラスの規模を誇るLACホールディングスのグループに加わった。用いられたスキームは、全国的にも例が少ない未上場会社同士の株式交換。キャンピングカー市場が拡大する中、今回の決断までの経緯や、今後の展望について伺った。

  • 対象企業

    株式会社ダイレクトカーズ

    三重県津市 / 代表取締役 百田 雅人

    業種 キャンピングカーの製造・販売
    提携の目的 事業成長
  • 対象企業

    株式会社LACホールディングス

    岡山県倉敷市 / 代表取締役 田中 昭一・山田 秀明

    業種 キャンピングカーの製造・販売
    提携の目的 事業拡大

ダイレクトカーズ 百田様にお伺いします。
現在、貴社が取り組まれている事業について教えて頂けますか。

百田

 ダイレクトカーズは三重県津市に本社があり、キャンピングカーの製造・販売事業をしています。創業は2009年11月です。昨年、神奈川県厚木市に、新規出店をしました。
 私は宮城県生まれで、神奈川県で育ち、卒業後は全国展開していた中古車販売の会社にサラリーマンとして働いていました。創業のキッカケは、全国各地域のエリアマネージャーをしていた時に、勤めていた会社が倒産した為です。今まで培った経験を基に「自分でやってみよう」と思い、中古車販売の事業を今の専務と常務の3人で個人事業として立ち上げました。当時、愛知県に住んでいましたが、たまたま空いた物件があった三重県に拠点を構えたのがスタートです。

百田

 キャンピングカー事業に取り組んだきっかけは東日本大震災です。被災した南相馬市の方からお問い合わせがあり、三重県で加工して福島県に納車しました。その時、お客様が非常に喜んで頂けたのが強く心に残り、「こんなに喜んで頂けるなら、他の車とも違うし、生涯の仕事として価値がある」と感じ、ハイエースを中心としたキャンピングカー事業に特化することを決めたのが、現在の事業を形作りました。
 今、ダイレクトカーズで各地方自治体と南海トラフ地震に備えて災害協定を締結しているのは、この経験があるからです。

貴社の強みや課題、業界について教えて頂けますか。

百田

 現在のダイレクトカーズの強みの一つは販売力です。他の企業より先駆けて、メディア事業部を設け、若い人材が中心となって、自らSNSやYoutubeで情報発信をしており、販売促進・広報の強みになっています。一方、事業の課題は製造です。これはダイレクトカーズだけでなく、業界全体の課題ですが、たくさんの需要があるにも関わらず、製造する労働人材が少ないことに加えて、手作りの作業が多いので、どうしても納車までに時間がかかってしまいます。受注から納車まで、最短でも約半年、長ければ1年待ちという場合もあります。
 また、我々は、JRVA(日本RV協会)という、日本でキャンピングカー文化を振興する業界団体にも加入しています。こちらの協会は、キャンピングカー文化を育成していくことを目的としており、ショーやイベントを通じてキャンピングカーの楽しさを宣伝しながらマナーやルールを普及し、初心者から経験者まで快適にアウトドアライフや車中泊を楽しめるインフラ面を整備していくことが役割となります。

今回のLACホールディングスとの資本業務提携の
きっかけ・経緯について教えて頂けますか。

百田

 今回の資本業務提携の相手先である、LACホールディングスの山田社長とは、元々、同じ業界の経営者仲間でした。山田社長が田中会長とLACホールディングスを設立された当初から、一緒にやろうというお誘いはありましたが、その時はそこまで真剣に受け止めていませんでした。
 一緒にJRVAでのお仕事、意見交換、懇親会を通じて、山田社長の人柄を知り信頼関係が深まっていったと思います。改めて山田社長から一緒にやろうというオファーがあった時、単なるM&Aで株とお金のやり取りであればお断りするつもりでした。今回の提案の内容は、株式交換というスキームを用いて、お互いの株式を交換し、私もLACホールディングスの経営陣として加わった上で、一緒にやっていきたいという内容でした。この提案を受けて、ダイレクトカーズの成長スピードを加速するためにも有効じゃないかと考えるようになり、LACホールディングスに合流することを決意しました。

未上場企業同士の株式交換という、あまり例のない取組ですが、
このスキームを選ばれた理由と狙いをお聞かせ頂けますか。

百田

 M&Aという言葉だけを聞くと、一般的には「企業買収」や「お金をもらって、利益を得て終わり」というイメージが強いと思います。私という経営者がどういう会社をつくりたいか、何を目指すか、それを実現するためにどういう手段を用いるかを考えた時、今回のスキームは最適でした。
 LACホールディングスに参画する提案が、知らない会社や異業種の会社からであればきっと実現しなかったと思います。株式交換はお互いの株を持ち合う関係になるので、最初に敵対心があれば成り立ちません。同じ業界で、近い立ち位置にいるからこそのスキームだと思います。実際に、グループになった現在、1週間のうち6日間も一緒にいるような関係です。これまで築いてきた信頼関係をベースにしたスキームだと思います。

百田

 事業面でも強いシナジー効果が見込めます。全国的に拠点ができることで、お客様にとって近くの販売店に足を運んで頂きやすくなり、アフターサービス・修理対応が可能となるというメリットが生まれます。加えて、今後は販売面で、グループ各社の車両を販売可能にしたり、製造面でも各社が持つ技術や部品を共有する事を考えています。
 ヨーロッパのキャンピングカー市場は日本と比較してグループで事業展開している傾向が強くなっていますが、日本ではあまり進んでいません。今後、グループを強化することで、お客様への付加価値の高い商品の提案・販売・アフターサービスを行う体制を整える事と、製造の短納期化や部品の共同仕入れによるコスト削減をする事が可能になると考えています。

百田

 今回を振り返ると、資本提携の理由は、業績悪化や資金繰りではありません。実際に、今期もダイレクトカーズとして120%の増収を遂げています。ただ、私としては業績が良い時に、将来の仕掛けをしていきたいという想いがありました。
 会社と自分自身の未来を考えた時、創業から支えてくれた専務・常務と一緒に頑張りたいという気持ちがあります。また、息子への承継も考えましたが、まだ小学校3年生と5年生なので、将来的なところは見通せず、妻からも「レールを敷くのはよくないんじゃないか」とも言われました。
 そんなことを色々と考えていた時に、今回の提携の提案があり、海外展開や事業の飛躍等、これまでと違った新しいチャレンジができると考えました。山田社長にも率直な気持ちを伝えたところ、息子たちへの承継も将来その時になって考えればよいとおっしゃってくれました。
 今後のチャレンジの方向性の一つには、IPOも選択肢だと思っていますが、先ずは働いている社員の皆さんが誇りを持てるグループにしていきたいです。 

資本業務提携のアドバイザーとして、
クレジオ・パートナーズを利用した感想を教えてください。

百田

 率直な感想としては、「真面目」「熱心」という印象です。担当してくれた酒井さんは、資本提携の契約締結が終わってからも色々動いてくれました。他責ではなく自責の念を持ちながら、いい意味で自分ごととして働いてくれたと感じています。今回、クレジオ・パートナーズじゃなかったら、まとまらなかったかもしれないですね。元々異なる価値観や考え方が違うところから、双方の間に入る仕事なので、それをまとめていくのはものすごく労力・時間が必要です。改めて感謝をお伝えしたいです。
 その上で、これで終わりではなく、LACホールディングスが次のステージを目指すためにも引き続きお力添えをお願いしたいです。

資本業務提携を終え、今後の方向性を教えてください。

百田

 同じグループの人間として、田中会長、山田社長、それぞれが築いてきた企業の文化を守っていきたいです。その上で、お互い切磋琢磨して成長できる組織を目指していきたいなと考えています。今回、地域金融機関ファンドとも初めて接しましたが、数字に強く、ものすごく熱心で真面目に業務に取り組んでおり、うわべだけでなく、本当に会社のことを考えてくれていると感じています。
 今年、新たに竣工した「倉敷玉島工場」はキャンピングカーの専門製造工場として日本で最大規模と思います。これは、色々な方々の力が結集しグループだからこそチャレンジし、実現できた事だと感じています。各社の得意な領域を活かしながら、新たらしい収益事業の構築や、収益体質を強化していきつつ、新卒・海外での採用に取り組み、マルチな人材を育て、未来に続く会社になることを目指しています。
 コロナ禍で世の中が変化しているので、我々もアフターコロナ・ウィズコロナを意識して時流を捉えた動きをしていく必要があります。コロナ禍により、少人数で密を避け、好きなところへ行きたいという旅が注目されています。その中で、アウトドアへの関心が高まり、キャンピングカー市場も成長しています。アメリカ・ヨーロッパと同じく、日本にもキャンピングカーの文化をつくることで、産業として発展させていくことが必要だと感じています。

最後に、事業成長を目指す経営者に向けてメッセージをお願い致します。

百田

 過去の経営から学んだことは、全ては経営者の一念だということです。私が大事にしている言葉で、社内のメンバーによく話すのは、「現実・現場・現品・現状」です。社長がどういう会社・組織をつくりたいかという、望んでいる未来と、そうなっていない現実を比べた時に、どうしてもギャップが出てきます。このギャップを埋めるために何をすべきかは、「自分」と「自分たちの会社」という小さい枠の中だけで考えているだけでは変わらないというのが、13年間会社経営をしてきて実感しました。
 もし成長を目指す経営者の方がいらっしゃるのであれば、株式交換を通じてグループで取り組んでみるというのも一つの手段だと思います。クレジオからも、株式交換で経営陣が一体になるということは上場企業を見ても稀なケースと聞いていますが、一歩前に出ないと未来は変わらないと思います。マーケットだけでなく、競合も含めた外部環境が激しく変化する中で、そこにキャッチアップするためにも、自社の枠組みだけで対応するのが難しい時代になりました。私自身、やりたいことと、できることは違うと痛感しますし、そこをどうすべきかの答えは経営者自身の中にしかありません。グループに入る中で、会社を見る角度が変わることを実感しつつ、よい意味で緊張感がありますし、これからどうしていくかが問われていると思います。