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実績 PERFORMANCE

後継者不在の課題を解決し、先行きが不透明な経済環境の中で、会社の未来を託すためにM&Aを選択。M&Aの決断に至った背景や、担当者と信頼関係を築いていった様子について、児島配送センター取締役 江見勲氏に伺った。
CASE 15

後継者不在と経営課題を解決、
地域運送業におけるM&A

岡山県岡山市に本社を置き、岡山・倉敷地域を中心に運送を担う児島配送センター。後継者不在の課題を解決し、先行きが不透明な経済環境の中で、会社の未来を託すためにM&Aを選択。M&Aの決断に至った背景や、担当者と信頼関係を築いていった様子について、児島配送センター取締役 江見勲氏に伺った。

  • 企業

    有限会社児島配送センター

    岡山県岡山市 / 取締役 江見 勲

    業種 運送業
    M&Aの目的 後継者不在/事業成長
  • 譲受企業

    シーアール物流株式会社

    岡山県岡山市 / 代表取締役 大久保 泰造

    業種 運送業
    M&Aの目的 事業拡大

児島配送センター 江見様にお伺いします。
事業内容や会社の沿革について教えて頂けますか。

江見

 児島配送センターは、岡山・倉敷地域を中心に、一般貨物運送事業・労働者派遣事業・請負事業の3つを営んでいます。
 会社の創業は、父が個人で牛乳配達をしていたノウハウを活かし、日本通運の宅配便の業務をお手伝いすることから始まりました。そこから、一念発起して、貨物軽自動車運送事業の届出を行い、同じような事業をしている人を集めて、児島配送センターを設立しました。会社を立ち上げてからも、日本通運との繋がりは強く、水島地域の工場への労働者派遣等、事業を拡大していきました。

江見

 私は、2代目となりますが、父が競輪選手に憧れていたこともあり、その影響を受け、高校時代は競輪のプロ選手を目指していました。高校から競輪学校に入るために練習を続けており、当時、会社を継ぐという考えはありませんでした。結局、プロになることは難しく、その後、父の会社で、アルバイトから仕事を始めました。
 父から「継いで欲しい」と言われたのは突然でした。それまでは、私とは別の古くから会社にいた方に継がせる意向だったようですが、いざ事業承継するというタイミングで、色々なことを考え、心境の変化があったようです。

江見

 私が34歳の時に社長を引き継ぎました。会社は40人程度の規模でしたが、その当時は、会社を継ぐことについて、あまり深く考えてはいませんでした。私が社長になった後に、新しくトラック運送事業を始めました。これも日本通運との信頼関係から生まれた事業でしたが、今では会社を支える柱となる事業に成長しています

M&Aを考えた理由について教えて頂けますか。

江見

 一番大きな理由は、後継者の問題でした。最初にご相談したのはM&Aマッチングプラットフォームでしたが、そちらに相談する前は、会社の将来について、廃業も選択肢に考えていました。ただ、現在働いている従業員の皆さんや、お取り引き頂いている取引先様への影響を考えた時、会社は残す形で事業承継を進めた方がよいと考えるようになりました。
 加えて、当時新型コロナウイルス感染症が広がり、いわゆる「物流業の2024年問題」と呼ばれるような法改正に伴う労務のコンプライアンス遵守等、物流業界が大きく変わろうとする中で、自分自身の中で、先行きが読めなくなっていることに不安を覚えていました。

江見

 私には子供がいますが、子供に会社を継がせるという考えはありませんでした。会社を継いだ人間として、会社を継ぐしんどさを知っているので、その経験を子供にはさせたくないと考えました。先が読めない状況の中で、これから会社を経営するというのは、想像を超えたしんどさや苦難が待っていると思います。

江見

 M&Aという会社の売買ができる仕組みがあることは、私にとってはすごくよかったと思います。最初からM&Aそのものに悪い印象はなく、児島配送センターは小規模ながらも、業績もしっかりして、負債も少なかったので、前向きに取り組めました。唯一、買いたいと言ってくれる相手が見つかるかは不安でしたが、会社を引き継ぐ側として、引き継いで頂いた会社に損はさせないと考えていましたし、それだけ真面目に、真摯に経営に取り組んだつもりではいました。なので、M&Aは会社の今後を考える際の手段の一つという位置づけでした。

M&Aの交渉の様子や、事業の引き受け先を選ばれた理由を教えてください。

江見

 M&Aの交渉では、クレジオ・パートナーズの眞﨑さんと一緒にお話をしながら進めました。眞﨑さんからは「M&Aは一筋縄では進まない、途中に山が1つか2つは必ずある」と、ことあるごとに言われていたので構えていましたが、実際にはそういったことはなく、スムーズに進みました。

眞﨑

 江見さんはM&Aを進める前から、ほぼ全ての資料をご自身で準備されていたので驚きました。資料をお願いした時も、すぐに出して頂く等、迅速かつ誠実にしっかりご対応頂いたことが、交渉が円滑に進んだ要因だと思います。

江見

 事業の譲受先となったシーアール物流は、岡山の運送業中ではイオンの配送を引き受けたり、県内の倉庫会社とも強い繋がりがある等、知名度のある会社でした。最初に面談をさせて頂いた企業で、先方の会議室での面談は非常に緊張したことを覚えています。これまでの実績や、現在の取組を伺い、最終的にシーアール物流に会社の譲受をお願いしました。

江見

 シーアール物流とのM&Aにより、大きな課題だった後継者の問題は解決しました。
 新型コロナや物流業界の大きな流れの中で、自分でビジョンを描けないという不安な思いについても、シーアール物流であれば、大きく変化する物流業界において、コンプライアンスを重視しながら、利益を確保して、事業を継続することを理解されていますので、そういった不安も軽くなりました。

クレジオ・パートナーズを利用した感想を教えてください。

江見

 他社を利用していないので、比較のしようがないですが、最初にM&Aプラットフォームの担当者からいくつかM&A仲介会社を紹介された時、私が選んだのは、まず地理的に近いところでした。当時はコロナの不安もありましたが、実際に来てもらって話ができる関係性が築けるかどうかは大事にしました。担当してくれた眞﨑さんが、一つ一つ親切に対応して頂いた印象は強いです。

眞﨑

 お伝えしたように、江見さんは、資料をしっかりと準備し、一つ一つのお願いもレスポンス早くご対応頂けました。なので、内心「M&Aが進まなければ、これは担当している自分の責任だ」と強く感じていました。

M&Aを終えた感想や今後の方向性を教えてください。

江見

 まだ引継ぎで在任しているので、現在はこれまでと特に変わったことはありません。これから変わるのかなと感じています。M&Aを終えた直後は、周囲でも驚いている方が多く、自分に近い人程、「財務内容が大変だからか」「経営に困っているからではないか」と言われることもありましたが、会社の業績は堅調そのものですので、今はそんなに言われることはなくなりました。
 ビジネスの側面では、少しずつシナジーが出ており、これまではお仕事を引き受けるのは日本通運だけという状況だったのが、児島配送センターの従業員が、シーアール物流の仕事をさせて頂く等の仕事の需給調整や、シーアール物流の従業員向け研修に参加させて頂く等、人材が行き来することで、新しい効果が生まれています。M&Aの前にシーアール物流からは、M&A後の従業員の退職が懸念と言われていましたが、結果として、当時の従業員が現在も誰一人欠けていないところを見ると、自分の責任は果たせているのかなと思います。

江見

 個人的な側面では、どこかのタイミングでまとまったお休みを頂くことも大切かと思っています。自分の性格として、次に何かやりたいことを見つけるためには、一度ゆっくりインターバルが必要なので、休暇の中で今後のことをじっくり考える時間をつくりたいなと思っています。

最後に、事業承継やM&Aに課題を抱える経営者に向けて
メッセージをお願い致します。

江見

 会社を廃業するなり何らか方向性を考えようと思った時に、私がまず取り組んだのは、貸借対照表を整理することでした。貸借対照表の中に、自分が把握していないものを記載しない、というところから始めました。
 それをしないと会社を引き継ぐことはできません。会社を引き継ぐことは、自分の家の中を見せるような感覚と同じです。資産であろうが、負債であろうが、まず家の中を掃除することが必要になります。これは、M&Aでも親族や従業員に引き継ぐ時でも共通していると思います。経営者の方は、自分だけでできない場合、誰かの力を借りてでも、会社にとってプラスのものと、マイナスのものを理解しておかないと、最後に自分に返ってくるという気がしています。