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実績 PERFORMANCE

CASE 06

事業成長・事業承継の両輪に向けて
ファンドを活用、キャンピングカー業界の
発展を目指した新しいチャレンジ

キャンピングカーの製造・販売業界において全国トップクラスの規模を誇るLACホールディングス。「地域の産業や事業を元気にしたい」という想いが一つになり、四国の地域金融機関4行が連携し生まれたファンド、四国アライアンスキャピタル。両社の資本業務提携により、キャンピングカー事業の更なる成長を目指す。地域の成長企業がプライベートエクイティファンドを活用する意味と可能性、業界の成長を視野に入れた今後の展望について伺った。

  • 投資先企業

    株式会社LACホールディングス

    岡山県倉敷市 / 代表取締役社長 山田秀明

    業種 キャンピングカーの製造・販売
    提携理由 事業成長、オーナー経営から組織経営への移行
  • 出資元企業

    しこく創生投資事業有限責任組合 (しこく創生ファンド)

    (運営:四国アライアンスキャピタル株式会社)

    愛媛県松山市 / 代表取締役社長 竹田雅弘

    業種 投資業務 等
    出資理由 成長支援

はじめに、LACホールディングスの山田様にお伺いします。
現在、貴社が取り組まれている事業について教えていただけますか。

山田

 我々は、キャンピングカーの製造・販売を全国トップレベルで手掛けています。「旅」が好きだったこともあり、私はキャンピングカーの販売事業を行うデルタリンクを1995年に設立しました。デルタリンクの強みはキャンピングカーの販売ですが、前職でキャンピングカーの製造をしていましたので、私自身は今でもキャンピングカー・ビルダーだと思っています。
 業界の成長を考え、販売に強いデルタリンクとキャンピングカーランド(愛知県)、製造に強いアネックス(徳島県)の3社が一緒になり強みを活かすことで、更に成長できると考え、2018年に経営統合して設立したのがLACホールディングスです。グループ全体で国内14拠点、韓国2拠点、中国1拠点の店舗・工場を有し、グループ内で製造から販売までできる体制となり、輸入も更に強化できるようになりました。グループの強みについては、これからそれぞれの経営資源を使って、販売力・生産能力を強化し、お客様に喜んで頂くために総合的に取り組んでいきたいと思います。

キャンピングカー市場の現状とこれまでの事業展開について、教えてください。

山田

 現在、アウトドアの市場が成長しています。約40年前のアウトドアブームが終わった時は、一時期は沈んでいました。当時、キャンプ用品は売れなくなりましたが、キャンピングカーの販売は減っておらず、少しずつ伸びていたんですね。
 デルタリンクは地域に店舗を増やしていきました。地方にキャンピングカー中古車の販売事業者がいなかったので、それが強みでした。地方において街中のアーケードが廃れ、郊外の大型店舗に顧客が集まる流れの中で、デルタリンクも同じように郊外の大型店舗化という戦略を展開し、保有する在庫を増やしていきました。地方の方が展開するコストが安いので、敢えて首都圏には出ませんでしたが、お客さまは全国からそれぞれの店舗にいらっしゃっています。

ファンドを活用しようと考えたきっかけ、経緯・目的を教えていただけますか。

山田

 アウトドアの注目度が高まり、ファッションやライフスタイルの一つとして捉えられるようになり、市場がどんどん成長しています。SNSの利用が広がると共感を呼びやすくなり、更に市場は拡大しました。コロナ禍でも、キャンピングカーは、「家族だけで遊べる空間」「災害対応に強い」等の新しいニーズが生まれています。
 こういった市場の成長に対して、会社の成長がついていけていないと強く感じていました。自分達だけの手では届かないところにきてしまった。市場の成長に合わせ、自分達も同じくらいに成長するためには、資金や人材等、大きな投資が必要です。具体的には、販売力の強化や生産体制の整備、社内システムの構築が挙げられます。そのためには、内部留保だけではなく、出資を受けることで、市場の期待に応え、業界全体を盛り上げたいと思うようになりました。
 出資を受けることにプレッシャーはあります。利益を出して、出資者に損をさせてはいけない。今まではいわゆる「オーナー社長」でしたが、これからはより経営に専念しないといけないと感じています。

資本提携のアドバイザーとしてのクレジオ・パートナーズの感想を教えてください。

山田

 代表の李さんとは、LACグループ立ち上げからアドバイスをもらっていました。感想としては、「クレジオ・パートナーズの仕事は自分達ではできないよな」ということ。私は負けず嫌いなので、どの分野においても「できない」と言いたくないのですが、M&Aに関しては持っている引き出しの多さ、これまでの実績からくる経験値、細かい知識といった点では、やっぱり違うなと感じます。
 M&Aは、誰かが間に入ってくれた方が正当だと感じます。経験値や知識がない中で交渉しても、真実を見抜くことができない。見抜こうとして細かく確かめるためにコストを割くことは、中小企業では現実的ではないと感じています。

資本提携の交渉を進める中で不安に思われたこと、大変だったことはありますか。

山田

 不安に思ったことはありませんでした。「結果が難しければやめればいい」とも思っていました。ただ「経営者として外部資本を受け入れる経験も面白そう」と感じたことも事実です。経験することで、何かしらの結果やノウハウが得られます。何もやらなければ、今と変わらない。交渉の途中で「やっても後悔するし、やらなくても後悔する」と言ったことを覚えています。今でも後悔する時はありますよ。それでも業界の発展のためには必要な取組だと思っています。我々だけではなく、次はどのプレーヤーが挑戦してくるのか、追随してくるのかというのは、楽しみですし、気になりますね。

提携先に四国アライアンスキャピタルを選んだ理由を教えていただけますか。

山田

 いくつかのファンドと話をしました。四国アライアンスキャピタルは、我々の成長戦略を理解してくれました。出資を受け、挑戦すること。地域金融機関によるファンドなので、地域企業と一緒に成長することが彼らの使命です。そういう意味で、他のファンドとも目的が違うと捉えています。キャンピングカーという事業と、地域とのシナジーも考え、単純な利益追求ではなく、彼らが持つ使命感に共感しました。担当してくれた川添さん、羽方さんとも感覚が合いましたし、意思決定していただいた竹田社長の柔軟性と、我々の挑戦と今後の成長、業界の発展性や魅力に理解を示し、腹を括ってくれた、LACグループを信じてくれたことが嬉しかったですね。

今後の目標や取り組みたいことがあれば教えていただけますか。

山田

 我々は、まだ海外戦略が遅れています。韓国にも販売拠点がありますが、まだまだ成長の余地もあります。海外での拠点を拡大していきたいと思っています。

クレジオ・パートナーズに求めることがあれば教えていただけますか。

山田

 クレジオ・パートナーズに求めるのは、日本のトップのコンサル会社になって欲しい。私自身は経営のプロだと思っています。私も、後継者が不在のため事業承継について対策が必要です。これまでは、事業成長と事業承継、両方を考えながら走っており、自分の頭の中だけでどうしようと考えていました。李さんに出会ったことで、事業承継は自分が考えなくてもいいんだと割り切ることができました。将来の事業承継・資本政策の問題はクレジオに任せて、自分は「いい会社を創ることだけに専念すればいい」と思えるようになりました。

最後に、山田社長から、今後ファンドの活用を検討する経営者へメッセージを
いただけますか。

山田

 ファンドを活用するのは「IPOやるよりも楽ですよ」ということですかね(笑)。
 事業を成長させるためにIPOという選択肢もありますが、ファンドを活用することで、同じような効果が得られるのであれば、配当よりも事業成長を重視してくれるファンドを活用した方が早いし、楽だと思います。
 株式の議決権は大事ですが、「自分の意見を通すため」に議決権は必要ないと思います。私は、自分自身の考えが必ずしも正しいとは思わないし、正しい決断をするためには、様々な意見を聞くことが大事だと考えています。議決権と資産を分けて考え、外部の資本を受け入れることで、必要な資本と信用を得て、成長のスピードが上がるのであれば、ファンドを活用するという選択肢はありだと思います。
 私は旅が好きです。いい景色が見たい。根が飽き性なので、変化がないと生きていけない。業界の発展に尽くすため、新しいチームと今後の展開に胸が躍ります。

次に、四国アライアンスキャピタルで今回の件を担当された川添さんと羽方さんにお伺いします。四国アライアンスキャピタルの概要と現在の取組について教えてください。

羽方

 四国アライアンスキャピタルは、「四国アライアンス」という、四国の4行(阿波銀行、百十四銀行、伊予銀行、四国銀行)による包括的な提携(アライアンス)から生まれたファンド運営会社です。2018年に銀行系のプライベートエクイティファンドの運営会社として設立しました。事業承継、事業成長、事業再生に課題を持つ地域企業の株式等を取得し、その企業の株主等となり、より深い立場で経営に参画し経営課題を解決する支援を行っています。
 今回LACホールディングスに出資を行った「しこく創生ファンド」は、各4行が基盤を有する地域の中小・中堅企業の事業承継・事業成長を目的に、銀行という背景を活かしながら、それぞれの経営資源を活用したハンズオンで経営支援することを基本方針としているところに特徴があります。

クレジオ・パートナーズはどのような印象でしたか。

羽方

 これまでの経験上、出資の交渉では、イレギュラーなことが発生するケースが多々あります。LACホールディングスの場合も、事業規模が大きくグループ会社が多いこともあり、我々のようなファンドと、企業の間に入ってくれる方の存在は非常に重要です。アドバイザーの力量で、進捗するスピードがかなり変わることもある中で、クレジオ・パートナーズには迅速かつ柔軟に対応していただき、対応力が素晴らしかったというのが正直な感想です。

川添

 両者間の認識が乖離するケースや、デューデリジェンスで現場へ噛み砕いて説明が必要なケースがありますが、クレジオ・パートナーズが間に入って事前に整理してくれたのもありがたかったです。LACホールディングスのアドバイザーという立場でしたが、我々ファンド側の立場も理解した上で、それぞれが歩み寄るべきところを示していただけました。

今後のLACホールディングスとの関わり方と、目指す目標について教えていただけますか。

羽方

 今後は、私がLACホールディングスの社外取締役となり、経営戦略室長という立場で関わります。アライアンス4行の資源を使って、生産・販売・サービスの強化を支援しつつ、外部の目線を持ってアドバイスできるような役割を果たしていきます。特に、出資検討において、労務や人事の部分はまだまだ改善できる余地があると分かりました。グループとして成長する際の大きな課題となるので、対策を考えて実行していきます。

川添

 四国アライアンスキャピタルの機能として、ファンドメンバーが経営に深く関与し、企業価値を上げるご支援を、身体を動かして、一緒に汗をかきながら行います。そうすることで、金融機関としてもノウハウを蓄積し、企業と銀行、両方の価値を高めることができます。事業承継が進まない理由の一つは、その準備のための社内リソースが不足し、後回しになりやすいことです。経営と資本の課題を解決する。これが、地域における我々の価値です。

羽方

 LACホールディングスへ投資決定した理由の一つは市場の成長性です。但し、市場が成長しているからといって何もしなければ、その会社の成長はありえません。我々も一緒に、全国トップレベルの企業を目指します。
 成長への投資はリスクも伴います。我々が加わることで、アクセルとブレーキの両輪の役割を担い、グループとして成長する中で、どういう姿になっていきたいかを、真剣に議論していきたいと思います。

川添

 キャンピングカーは業界に活気があります。若い世代も含め、幅広い世代に受け入れられています。また、四国アライアンスとして関わることで、震災・豪雨等の災害対策としての活用や、観光を目的としたRVパークの整備等、行政・自治体を中心とした地域と連携し、雇用を生み出す取組も進めていけるのではと考えています。
 ただ、なにより一番は、「業界自体が楽しい」ことですね。展示会にも参加しましたが、来場者の年齢層は本当に幅広く、ペットを連れたご家族も沢山いらっしゃって、将来の計画や色々な楽しみ方について話している様子を見ることができました。今回、皆さんと議論する中でも、ビジネスの話をするのが一番楽しそうでした。今の時代の働く環境を考えると、この楽しさは重要だと思っています。

最後に、お二人から、ファンド活用を検討する経営者へメッセージをいただけますか。

羽方

 まだ地域では「ファンド」というと「ハゲタカ」のような後ろ向きなイメージが先行しがちです。有効に活用して頂くためにも、地域金融機関が取り組むことで、ハードルが下がる効果もあると感じています。数年後には、ファンドを活用して事業を承継する、成長させることが一般的になる社会を目指して、お気軽に相談して欲しいと思います。
 我々の思いの根幹は「地域を元気にしたい」。地域企業が成長することで、銀行も一緒に成長します。ファンドという地域企業に必要な機能を提供していきたいです。